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Chapters 04 弓道場の人間模様

Chapters 03 早朝の冬木市





一学生の部活動で使用するには、かなり立派な作りの弓道場。

学校の理事長がよほど弓道に関心が高いのか、
この学校の特徴の一つに挙げられる程豪華な作り。


「ほらほら。まだ開始まで時間があるし、中でお茶しようぜ遠坂」

上機嫌に遠坂凛の腕を引き、その弓道場へと引っ張っていく美綴綾子。
親しい友人相手に気を許しているのか、元来美綴嬢の中で根付いていると思われる
男っぽい口調が垣間見える。




そして言葉通り弓道場でお茶をすする二人。

もっとも、単純に寛いでいるだけではない。
和で占められた道場内で、熱い日本茶を片手に
二人して今日の授業の予習を行っている。

名家である遠坂家の令嬢として、学校では優等生を心掛けているという遠坂凛嬢だが
魔術師としての勤勉な生活と、厳格な父の躾の賜物で、態々演じるまでも無く
肩肘の張らない優等生生活が出来上がっている様だった。



「・・・さて、単刀直入に聞くけど、そっちの調子はどうなのよ遠坂。
いい加減、頼りになる相棒は見つかった?」

――――とはいっても、そこはやっぱり女学生。
周りに人も居ない中で親しい友人同士なら、ついつい密談に華を咲かせてしまうもの。
遠慮の無い美綴嬢の問い掛けに、思わず溜息をもらす遠坂嬢。


「・・・・・・ふう。本当、いきなり本題に入るのね貴女は。
その言いぶりだと、そっちはもう見つけたんだ?」



「ノーコメント。遠坂が手を明かすまでは、こっちも秘密さ。
・・・で、どうなのよ?その疲れた顔を見ると脈ありって感じだけど?」


「こっちもノーコメント・・・・・・って、貴女に隠してもどうせ見抜かれるか。
残念ながらこっちはまだよ。・・・綾子の方は?
お互い、のんびりしてられる余裕は無い筈だけど?」


二人っきりの状況にこちらも気を許したか、「美綴さん」ではなく「綾子」と
気安い呼び方で相手に問い掛ける遠坂凛。

それに対し、目を閉じていかにも「ダメダメ」という風に首を振る美綴嬢


「そうなんだけど、あたしも雲行きは怪しいわ。
とりあえず取り繕う事は出来るんだけど、事が事でしょう?
この先の命運がかかってるんだから、妥協するワケにもいかないし」


「・・・・・・ふうん。簡単に決めて、わたしに負けるのもイヤ?」


「もちろん。わたしにとって重要なのはアンタを負かす事だもの。
何が手に入るとか、何を手に入れるとかは二の次よ」


「――――はあ。似たもの同士ね、わたしたち」


「ええ。初めて会った時に言ったでしょ。
アンタとはそういう関係にあるんだって」

そういって不敵に笑う美綴綾子の表情に、初対面の言葉を思い出す。


『アンタとはきっと、殺す殺さないの関係までいきそうだ』


随分物騒なライバル宣言に、流石の遠坂凛も驚いた程だった。


ピューと吹く!ジャガー (C) うすた京介

後、この二人の会話を読んで大体の方は察したと思われますが、
要するにコレどっちが先に良い男捕まえるかという賭けの話し。
なぜか聖杯戦争に引っ掛けているせいで不自然かつ判り難い会話だが、
別にココでそれを意識させる必要性はないだろう。

ちなみに賭けの内容は、二人が三年生になるまでに先に彼氏を作るのが勝利条件で、
負けたほうは一日、勝利者の言う事を何でも聞かなくてはならないらしい。

でも二人とも美人だし、その気になりゃ男なんて選び放題だし、
そもそも二人とも男にそんなに興味が無いから、
相手を心底羨ましがらせるくらいの男を捕まえないと駄目という
男なんて女のアクセサリー論的な条件も付け加えられていた。


ヽ(`Д´)ノ叶姉妹か、キサマら!

僕といっしょ (C) 古谷実





そんな遠坂凛と美綴綾子のグッド・ルッキングガイ探しという
不毛な会話から少し経ち、会話は部活動の話に移っていた。

時刻の頃は、もうじき七時。
他の学生や朝練に来る部員も、そろそろ顔を出すだろう頃合。


「・・・・・・で、遠坂はどうして部活に入らないのよ。
運動神経がない、なんて戯言は聞かないからね。あたしゃ、去年の体力測定で
ことごとくアンタに負けたの、まだ恨んでるんだから」


「あら、肺活量では美綴さんに負けたわよ、わたし。
あと体重も美綴さんのが上だったけど」



「あはははは!やったー、重さで3キロ上回ったー!」


「・・・・・・って体重で勝っても嬉しくないってのよこのタヌキ!

僕といっしょ (C) 古谷実

そんな男がやったらグーで殴られても文句も言えない程ベタな
カミングアウト込みのノリ突っ込みを披露する美綴嬢だったが
彼女が猛るのも無理は無い。

学校でも屈指の運動神経で、自身もそれを自負する美綴嬢だけに
部活もやっていない遠坂凛に運動能力で差を付けられたというのは
けっこうプライドを傷付けられているようだった。

僕といっしょ (C) 古谷実

『美人は武道をしていなければならない』

という独特の美意識を持つ美綴嬢のプライドは、相当に高い。
私は美人だから当然だと云わんばかりに、空手や柔道、武芸百般何でもこなし、
唯一心得の無かった弓道でも高校から始めてすぐに頭角を現し、
今となっては当然の様に主将の座。

言ってみれば美綴綾子にとっては男だけでなく武道も女のアクセサリー扱いという事だ。
そんな彼女からしてみれば、遠坂凛程の容姿と運動神経で
武道を志さないというのは、納得いかないのも当然という事。

僕といっしょ (C) 古谷実



「危ない、お茶が零れるでしょ美綴さん。
主将なんだから道場は大事になさい」



「うるさい、あたしゃ主将であるに前に遠坂のライバルだ。
部員がいなけりゃアンタに食ってかかるのは当然よ」


「あら、部員が居なければ主将じゃないなんて、
問題発言なんじゃない、それ?」



「問題発言なもんですか。あたしはお飾りの主将だから、
出来る事っていったら不良部員を取り締まる事だけよ。
・・・あたし以上に射が立派なヤツがいるんだから、
主将としては面目なんてないわ」


「そうなの?藤村先生、美綴さんは飛び抜けて巧いって言ってたけど」


「う・・・・・・あの人がそう言うんなら、そりゃあ少しは自信が持てるけど・・・
・・・・・・まあ、居なくなっちまったヤツの事なんて考えても仕方ないか。
そうね、藤村先生がそう言ってくれたんなら、真面目に主将やんないとまずいか」

藤村先生、という言葉に、態度を改める美綴嬢。
プライドの高い美綴嬢が認める程の教師なのだから、余程優れた指導者なのか。
気持ちを切り替えた美綴嬢に、笑顔で返す遠坂凛。


「そうそう。噂をすれば影、そろそろ部員さんがやってくる頃でしょ。
わたしはおいとまするけど、美綴さんはきちんと主将になりなさい」



「あら、見ていかないの、射?」


「見ても判らないもの。遠くから眺める分にはいいけどね。」

――――そう、元々、弓道に興味があったという訳じゃない。

美綴綾子との会話で朝の時間は潰せたので、これ以上の長居は無用というもの。
それに朝練の邪魔になるのも気が引ける。

そう思い立ち、席を立ったとほぼ同時に――――

「――――おはようございます、主将」

丁度後ろから、部員の一人が、朝の挨拶をかけてきた。




「ああ、おはよう間桐(まとう)。今朝は一人?」


「・・・・・・はい。力になれず、申し訳有りません」


「ああ、いいっていいって。本人が弓をやらないって言うんなら、
無理をさせても仕方がない」

そう部員に返事を返すも、表情までは隠せずに、あからさまに残念そうな美綴嬢。
・・・そういえば、今朝も巧いヤツが一人抜けたとぼやいていた。

もしかして、先程美綴が言った「自分より射が立つヤツ」の事だろうか。
こと武道に関してはプライドが高く負けず嫌いな美綴綾子が
自分以上と認める程なのだから、並の腕では無いと思うが―――――

何れにせよ、込み入った話になりそうだ。
これ以上の長居は、無用というものだろう。


「―――それじゃ失礼するわ。また後でね、美綴さん」


「ああ、また後でね、遠坂」


「・・・・・・おつかれさまです、遠坂先輩」


「―――ありがと。桜も、しっかりね。」

最後に、顔見知りの弓道部の後輩――――「間桐 桜(まとう さくら)」に声を掛けた。

そんなに親しいワケじゃないけど、彼女も色々大変そうだ・・・・・・

Chapters 05 弓道場の人間模様②
by 1601109 | 2006-06-22 00:00 | Fate体験版プレイ記


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