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~エピローグ~

最終話     明日に届け



























「シンジ君!シンジ君!!
目を覚まして、シンジ君!!」



耳元に、ミサトの必死の声が、届く。






ーーー目の前には、心配げなミサトと、半泣き顔の、アスカ。
それ以外にも、たくさんの人間が、心配げな表情でシンジの表情を覗き込む。



「ミサトさん……?それにトウジ!
ケンスケ、アスカに綾波、リツコさん……」




「どうやら、気がついたようね」

ホッとした表情を浮かべる、赤城リツコ。



「だから言ったじゃない!
そのうち目を覚ますって」


涙目のまま、強がった発言をする、惣流・アスカ・ラングレー。



「おまえがいっちゃん心配しとったんやないか!」

すかさず突っ込む関西人、鈴原トウジ。



「そういうトウジも、
『オー・マイ・ガッ!』って感じだったぜ。


米国で間違った英語の使い方を覚えてきた、相田ケンスケ。



「さっきまで、誰かがそばにいた気がする。
なんだか、とても懐かしい人が……」



「…シンジ、あんた大丈夫?」


「頭を強打した可能性があるわ。
安静にしていないと」


強がったものの、心配で堪らないアスカの気遣いを、
頭を強打した為の混乱と片付ける、綾波レイ。

ーーーー真実を知る彼女は、それ以上何も言わなかった。



「…そうだ!あの戦闘は、どうなったんですか!?
勝ったんですか!?それとも……」



「……アレを見てみなさい」

シンジの言葉に、すっと、指先を向けるミサト。
その方向には……






「……なに、……これ……」

眼前の光景に、思わず息を呑むシンジ。

第三新東京市のど真ん中に、ぽかりと浮かんだ、巨大なクレーター。
まだ熱を持っているのか、あたりには白い煙が燻っている。



「…戦闘中に、エヴァとS2機関が暴走状態に入ったのよ」


「しょーじき、あの時は死ぬかと思ったわ」


シンジの雄叫びと共に、永久機関として膨大なエネルギーを有するS2機関が、エヴァと共に暴走。
膨大なエネルギー質量の、逆流。ネヴァダ基地を消失させた時以上の、災厄。

それが、周囲を、NERV施設も、ゼーレの送り込んできた機甲師団も、
空挺も、量産型エヴァも、…そして、リリスの眠る、ジオ・フロントを包み込んだ。


そして



「反転したA.Tフィールドが、ジオ・フロントを
次元ごと削り取って…そして、エヴァも消えてしまった」



ーーーすべてを飲み込んで、消えた。



「あ、戻ってきたわね。
どう?何人かは、見つかった?」



「ええ。応急処置しか、できませんでしたが……」


「それで上等だ。
おいおいUNの救護部隊が来るだろう。それまで保たせればいい。」


……地表に、これほどの爪痕が残るほどの、災厄。

にも拘らず、不思議なほどに、NERV組織の人間は、生き残っていた。
無傷でないものも当然多いが、皆が皆、生き残っている。

全てのエヴァも消滅したが、パイロットは皆、無事に生存を果たしている。
……災厄の中心であった、シンジですら。


「ジオ・フロントが根こそぎ……
どうしてみんな……僕も無事なんですか?」



「さあ……どうなったのか、正直よくわからないわね。
気がついたら、みんなここにいたのよ」


むぅー、と難しい顔のミサト。
暴走、爆発の瞬間…・そのあとは、いつの間にか、皆が、無事な場所。
ミサト以外にも、この状況を説明できるものはただひとりも居なかった。


「…でも……戦闘は、終わったんですね」


「エヴァは、量産機も含めて、一気残らず消えちゃったし。
戦略自衛隊も、戦闘継続能力を失ったわ」


双方とも、戦うべき武器も、戦うべき理由も失った。
エヴァもリリスも消失してしまっては、もはやゼーレのシナリオは
絵に描いた餅にすら成り得ない。…全ては、終わったのだ。


「痛み分けってのが、悔しいけどね」


「ぜいたくよ。エヴァを除けば、NERVの人的被害は
ほとんどないんだから。…それで、いいじゃないの」



「青葉さんや、日向さんは?」


「安心して。他のみんなは、戦自の生き残りと一緒に、
生存者の捜索をしているわ」


戦略自衛隊の一部も、生存を果していた。
攻め込んできた側とはいえ、この凄惨な結果に、自分達が踊らされていた事、
戦いの無益を悟ったのであろう。

いがみ合う事をやめ、NERV側と協力して、生存者の捜索と復興に力を注いでいた。



「みんな無事なんだ!
ミサトさんも、リツコさんも、みんな。
冬月さんや、父さんも……」



「ああ、シンジ。……よく、やったな」


「父さん……」


これまですれ違ってきた親子は、ようやく、お互いを正面から見つめる事ができた。
素直な、息子への賛辞。素直な、父への笑顔が、そこに……







「父さん、エヴァが消えたって……」


「おまえに、もうエヴァは必要なくなった。…それだけのことだ。」


「父さん……」

自らの殻を打ち破り、前に向かって歩き出した息子の成長。
もう、NERVという組織が、エヴァンゲリオンという存在が無くとも、
シンジは、世界を真直ぐに見つめながら、前に進んでいけるだろう。



「葛城三佐……いや、葛城君。
これからも、シンジを宜しくお願いします」


「…司令?」

碇ゲンドウの、敬語。
シンジを頼みます、という言葉には、司令としての言葉ではなく、
父親としての願いが、込められていた。

だが、なぜこの期に及んで、シンジをミサトに頼むのか。
もはや、NERVという肩書きは、無い。父と子は、判り合えた。

それなのに、何故……



「どういうこと、父さん」


「おまえはもう、一人前の男だ。
…これ以上、私がしてやれることは、無い」

「子の成長を見届けたら、消える。
…親とは、そういうものだからな」



「でも、もう戦争は終わったんでしょ。
せっかく…せっかく一緒に暮らせるようになったんだよ!」



「…おまえが、必死に自分の使命を果したように、
私も残された仕事を、片付けなければならない」

「それが、信念の代償だ。…今のおまえなら、判るはずだ」


「くっ……。でも、でも……!」


…残された仕事。

エヴァは、消えた。リリスも、消えた。使徒も、もはや存在しない。

だが、まだ『人間』が残っている。
「ゼーレ」という組織、委員会の老人達は、この最後の戦いにすら
姿を見せることなく、闇の中に、蠢いている。

「人類補完計画」という拠り所を失ったにも拘らず、まだ、蠢いているのだ。

最後に反旗を翻したとはいえ、自身も加担したのだ。
決着をつけなくては、ならない。自身の手で、その燻りを。



「碇、おまえには、私が必要だ。
…ちょっと面倒ごととなると、からきしダメだからな」


「冬月、先生……」

「…どうやら、止めるわけにはいかないようですね」


「…父さん!」

「また、会えるよね?
もし僕が間違ったら、叱ってくれるよね?
迷ったら、手を引いてくれるよね?」





沈黙。




わずかな、沈黙の時を経て…
ゲンドウは、何時も通りに、眼鏡を左手で寄せ、答える。



「親とは、そういうものだ」


そう呟いて後……碇ゲンドウは、冬月のみを連れ、
瓦礫うず高い第3新東京市を後にした。






「…父さん!」

「父さん……
………ありがとう。
母さんも……」



去り行く父の背を見つめながら、シンジは、父に、母に、心からの礼を述べるのだった。








「連れていっては、くれなかったわね……
最後まで、残酷なヒト……」


碇ゲンドウに愛情を寄せ、盲愛のままに、ゲンドウの指示に従ってきた赤木リツコ。
だが、結局、彼女の愛は、ゲンドウに届かなかった。
ともすれば人類の破滅すらも投げ打った、己の愛。
実を結ばなかったそれに、リツコは寂しげに呟くだけだった。


「センセのオヤジさん、もうちっと愛想いうもん
覚えたほうが、ええんとちゃうか」



「まったくだ。
『嵐が俺を呼んでるぜ、ベイビー』くらい、言えないものかな


ヽ(`Д´)ノどうしてオマエは最後まで場の空気を浮かせるかな!


「いいんだ。あの不器用なところも、父さんなんだから。
僕はそこも、好きになれたよ」


そういって、男二人の軽口を笑顔で返すシンジ。
きっと、また会える。次は、もうなんのしがらみも無い、自然な笑顔で。



「さてと……
司令も副指令もいなくなったってことは、私が最高司令官ってことねぇ」


指揮すべき司令官も、設備施設も、エヴァすらも失ったNERV。
もはや、組織としての形を呈していないと思われたNERVだが、
ミサトは何時もの不敵な笑みを浮かべて、言い放つ。


「さあっ!油売ってる暇はないわよ!
先ずは全力で生存者の確認。リツコ、落ち込んでないで手伝って!!」



そう、NERVは地球防衛機関!
この瓦礫の中、NERVとして…人類として成すべき仕事は、まだまだ山とあるのだ。
落ち込んでる暇も、立ち止まっている暇も無い。


「私達は、前に進むしかないんだから!」







ジオフロントの消滅は、ネヴァダ基地に続くS2機関の事故として、処理された。
侵攻してきた軍の一部、戦略自衛隊は、事故救出に来た事として、扱われる。

NERVは、指揮官、設備を失い、解体。
残された謎、陰謀は、世間の知らぬ闇の中へと消えていった。

その後のゼーレの追撃は、無かった。

エヴァ、リリスの消失。ジオ・フロントを丸ごと削り取ったあの大規模な、災厄。
計画が水泡と化した以上、これ以上軍を動かしても、リスクを負うだけ。
また、計画の消失が老人達の絶望としてあらゆる気力を奪い去った事も、想像に易いだろう。
真相はわからない。だが、ゼーレにもはや動く気配が無い事は、事実であった。


解体後、NERV職員達は、それぞれの手で道を切り開き、
自分達の道を歩み始めた。
災厄の日々、激動の日々は長い時を経て、昔話へと変わってゆく……


葛城ミサトも、今は、あの眠っていた日の平穏のような、
穏やかな日常の中に、その身を委ねていた。


あれから暫くが過ぎ、シンジは、小説を書き始めた。
何かを想像する、そして創造する事に、喜びを見出したシンジ。

文章という媒体で、己の世界を表現する事を覚えたシンジは…






成長したシンジは、相変わらずミサトとの共同生活を続けている。
勉学に優れたシンジは、その才能を生かし、小説家としてその道を進んでいた。



「ねえシンジ君、さっきの編集さん、
言われたとおり断ったんだけど……」



「ありがとうございます」


「でも、ずいぶん必死だったわよ。
それほど大変じゃないなら、引き受けてあげればいいのに」



「…僕は、書きたいものがないのに書くのは嫌なんだ。
単なる文字の羅列にしかならないから。」

「でも、いつも嫌な役目を引き受けてくれてありがとうございます。
…えっと…ごめんなさい」



才能が開花し、その筋では有名なのか、引く手あまたのシンジ。
だが、商売としてではなく、自分の書きたいものを書いてゆきたい。
作品に、悔いの残らないよう、魂を込めて書いてゆきたい。

そんなシンジの為、ミサトは半分マネージャーのようなことを引き受けていた。


「ホント、いつのまにか、立派な作家先生に成長したわね。
…シンジ君の中学のときの通知表、見せてあげようかしら?
さっきの編集さんに。」



「え!?そ、それはちょっと……」

意地悪な笑みを浮かべるミサトに、困惑顔のシンジ。
小説家として自立したシンジだが、相変わらずミサトには頭が上がらないようだった。



「ミサトさん」

「…ありがとう」



シンジの望んだ、大好きなみんなとの、平穏な日常。
自らの手で勝ち取った日常は、大事なものをそのままに、
クラシック楽曲のように、穏やかに、緩やかに過ぎてゆくのだった……





ドラマチック育成ゲーム 新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画

開発・制作 : GAINAX

協力    : ブロッコリー

ネタ拝借  : 林ふみの先生(新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2nd)
       

スペシャルサンクス

墓標 (管理人 黒タカさん)
 
きりのべやの物置(管理人 天川直樹さん)

え、があったりなかったり。(管理人 由(ゆ)さん)


& 駄文に、最後までお付き合いいただいた皆様!

有難う御座いましたっ!




★ あ と が き ★

と、いうわけで幸せなエンディングを迎えた碇シンジ君だったわけですが、
気になるヒロイン達との今後とかは、文章のみでした。

結局、霧島さんで、ミサトの語りでシンジ君が好きなんだってで、終わり。



ヽ(`Д´)ノこんな味気ない
一言だけなら、ヒロイン攻略の
意味が有るかぁーーっ!!


ご清聴、有難う御座いました。

by 1601109 | 2007-07-29 00:00 | シンジ育成プレイ記


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